せっかち歌仙 その8


<五 月 雨 の 巻>


  少 艶   長者巻    紅蓮   晩菊    良流娯  山八訪  


 

発句

五月雨や湯煙立ちて地蔵かな

  

脇句

 河鹿のテノールせせらぎの音

長者巻

第三

潮鳴りを聴きつ朝日を眺むらん

  

 迷いは消えて心洗わる

  

5(月)

帰り道月に照らされ酔い覚まし

良流娯

 秋の花園舞う蝶悲し

山八訪

(初折裏)



障子立て紅葉の影絵風に揺れ

 思えばやがてうつる心ぞ

老いて尚 甘く切 なき恋の味

10

 盛夏来たりてカルピスが欲し

11

年を経し世界遺産や永遠に

12

 出会ってみたきもののけ姫に

13(月)

夏の夜半トトロの森に月白く

14

 驟雨立ち去り陽射し復活

15

ウィルスに機械も脳も動き止む

16

 一息ついて庭に降り立つ

17(花)

来し方を巡りて想う花影に

18

 西行の日は歌仙が似合う

(名残折表)



 

19

旅空に詠む楽しさや春霞

20

 祝いにもらうフルムーンパス

21

恨めしやハゲチビデブは禁句なり

22

 負をうりにするたくましき人

23

万智さんも未婚の母になりにけり

24

 家鴨と鴨の本家争い

25

過ぎ去れば今は名所傷あとも

26

 何を語るか時は流れて

27

氷融け残るバカラに 薄い紅

28

 砂漠の土となりにけるかも

29(月)

月光に映えて遥かな眺めかな

30

 踏み跡たどり高きに登る

(名残折裏)



31

長竿で蜻蛉追う子も微笑まし

32

 青空うつすつぶらな瞳

33

デジカメでシャッターチャンスをねらいおり

34

 エコノミストもオラも同罪

35(花)

物憂げに乙女たたずむ花のもと

36

 東風吹き抜けて ひ らりひとひら


  <2004年6月3日〜7月9日>