せっかち歌 仙 その6      

<万 両 の 巻>

 


晩 菊    少艶   長者巻   良流娯   紅蓮  銀次郎


 

発句

艶やかに濡れて万両色付けり

晩  菊

脇句

 指先痺る蹲踞(つくばい)の水 

少  艶

第三

京の朝砂紋の影を眺むらん

長者巻

 鳥取路より写メール届き

良流娯

5(月)

さばさばと月光を浴び立ち去りて

  

 色替わりなき紅葉さびしく

銀次郎

(初折裏)



一昨年も去年(こぞ)も今年も秋来れど

 秘めたる思い未だ実らず

渕となり夢での逢瀬願う日々

10

 「議長ー」の声議場に響き

11

宵の街心浮き立つ 寄席囃し

12

 CD売れて豪邸の建つ

13(月)

冷酒とビールケースの月見台

14

 腹鼓打つ鳥羽僧正忌

15

風聚(かぜしゅう)の演に聴きほれ文化の日

16

 違い乗り越え異国へ嫁ぐ

17(花)

背の君は裏地に花の気障な人

18

 蝶もうれしやひら りひらりと

(名残折表)



 

19

ネクタイをきりりと締めて卒業す

20

 ガングロ覚めて素肌輝き

21

気が付けば 迷い は遠き空の果て 

22

 なのにつぶやくIF・ もし・かりに

23

冬眠の熊うとうとと寝言かな

24

 世の交わりも季節ありけり

25

キラキラと光りあふれる高層街

26

 涙こらえてうつむき歩く

27

親もなく妻なく子なく友もなし

28

 金も無けれど時はたっぷり

29(月)

テント張り月と夜更かし湖畔にて

30

 日の高き酒つまは秋風

(名残折裏)



31

振り仰ぐ花梨の梢百舌鳥一羽

32

 ギターを奏でフォークを歌う

33

逢いたいと蒼天を見てなだそうそう

34

 春がすみ立つみ吉野の山

35(花)

土産には厄難よけの花がたみ

36

 合格祝う夜半の春かな


<2003年12月2 日〜12月18日>