せっかち歌仙・その58


<初花の巻>


    永井人生・良流娯・逐電・山八訪・茶目猫・晩菊・長者巻・紅蓮・多摩のO脚


 

発句

初花や手話の少女はよく笑う   
永井人生

脇句

心に響く卒業の歌  
良流娯

春夜の湯父は子を高く抱き取って  
逐   電

杖をつきつつ孫を見あげる  
山八訪

(月)

母看取る夜のはるけし名残り月 
茶目猫

思いは寂し秋の夕暮れ 
晩   菊

(初折裏)

漆黒の山間をゆく天の川 
長者巻

空のいずこに君はいるのか  
紅   蓮

悩み種いまはおいしきチョコレート  
多摩のO脚

10

黒き甍の奈良の寺でら  

11

日本一長い距離行く路線バス  

12

恋も別れもある里の駅  

13(月)

寒き夜月も震えて空の端  

14

硝子びりびり火の山の噴く  

15

堅雪をそろりと歩く麓町  

16

都踊りは春の夜の夢 

17(花)

いつの日か花咲くころに行きたしと 

18

袴衣装に春吹雪舞う  

(名残折表)

 

19

自転車を抜く三輪車春疾風.  

20

アルバム広げふりかえる日々  

21

汗香る君何すれぞ友に微笑む  

22

かち割り咥へ吠える応援  

23

虎落笛イソップの犬肉落とす  

24

恐ろしげなり聞き取る方も  

25

万博の予算二倍に口噤む  

26

初デートして未来を想う  

27

吹っ飛んだ会った瞬間なにもかも  

28

多くあやめて貰う勲章  

29(月)

月明り羊数えて睡魔待つ  

30

依怙贔屓している流れ星  

(名残折裏)

31

いさかいはどう有ろうとも秋日和  

32

丸くおさまる日溜まりの椅子   

33

うたたねし子どもの頃の夢をみる  

34

ようやく気づくあれはまぼろし  

35(花)

夕暮れに桜しべ踏む帰り路  

36

傍らの梅艶やかに生る  

 

<2025 年2月10 日〜 4月25日 >