せっかち歌仙・そのその56


<風光るの巻>


     良流娯・永井人生・逐電・長者巻・紅蓮・多摩のO脚・山八訪・茶目猫・晩菊


 

発句

山の声拾ふ補聴器風光る   
良流娯

脇句

母と旅する新入社員   
永井人生

春の泥父に地蛸を供えたく  
逐  電

庭越しに聞く団欒の声  
長者巻

(月)

今はなき生家をしのぶ月清か  
紅  蓮

身にしむばかり四つ葉マークが  
多摩のO脚

(初折裏)

放牧の羊の集ふ秋の暮  
山八訪

送りオオカミ途中で撒いて  
茶目猫

気がつけば恋の笑顔が待ちかねし  
晩  菊

10

駅ピアノ弾き受ける喝采   

11

風鈴の流るるようなラブソング  

12

厄年なんぞ気にもせず過ぐ  

13(月)

庭先の熊の足跡月さして  

14

サトイモ・柿・栗そっと下げる  

15

里の秋白寿の母は歌い逝く  

16

遠い国にもまた楽しみが  

17(花)

青空に一水を引き糸桜  

18

権瑞玉の群れをなす磯 

(名残折表)

 

19

霾(つちふる)や陸と海とが溶け合って  

20

水平線の先が故郷  

21

さあ泣けと蕩児還れば風が言い  

22

齢重ねてなお五里霧中  

23

道迷い足止めじっと考える  

24

真白き世界前も後ろも  

25

庭隅にいつのまにかの実万両  

26

面影しかと心に結び  

27

なつかしき想ひ尊しいつまでも  

28

シゲは打ったり天覧ホーマー  

29(月)

すやすやと眠る球児や月涼し  

30

家族総出の朝の草刈り  

(名残折裏)

31

気を遣う夕暮れ時の手花火も  

32

島の楽しみ祭りに神輿  

33

顔役の付かず離れず列を追ふ  

34

冬を凌いだ浮世も春だ  

35(花)

舳先ゆく河面彩る花筏  

36

流れる水も少し温みて  


 

<2024 年5月11 日〜7月26日>