せっかち歌仙 その54


<明日葉の巻>


紅蓮・ 多摩のO脚・長者巻・良流娯・永井人生・逐電・山八訪・茶目猫・晩 菊     


 

発句

明日葉の一直線に生えそろひ  
紅  蓮

脇句

ランドセル揺れ歯なしの笑顔  
多摩のO脚

第三

みどりの日車中遙かに富士を見て  
長者巻

土産は無事故という看板  
良流娯

5(月)

恍惚の父の手に在る月の石  
永井人生

路地の夜長を童謡が行く  
逐   電

(初折裏)

戦場の廃墟漂ふ赤とんぼ  
山八訪

待てど暮せど帰らぬ人よ  
茶目猫

唯一人募る思いを如何にせん  
晩   菊

10

巨大古墳を飛鳥に訪ね  

11

森の中命を懸けて子を守り  

12

思いを馳する未来の地球  

13(月)

赫き月あるじ奥より景徳鎮   

14

芸術よりも食欲の秋  

15

校門の場所取りの列運動会  

16

競技や遊戯見るのも楽し  

17(花)

村人のみな花守や千年樹 

18

眼凝らせば権瑞の玉  

(名残折表)

 

19

顔をあげ軒先見れば蜂の群れ  

20

気ははやれどももつるる足下  

21

階段を手摺りに頼り上がり下り  

22

安らぎ与ふ屋上緑化  

23

向日葵のような笑顔の人と居て  

24

つひ振り返る匂ふ人妻  

25

ハンケチのヘリオトロープ想いだし  

26

シャワーを浴びてビールが旨し   

27

とりあえず一息ついて二杯目も  

28

耳に貝殻静かな海辺  

29(月)

後悔の有明の月目を覚ます  

30

無心になりて秋遍路ゆく  

(名残折裏)

31

秋蟹で卓を埋めて山の贅  

32

酒なくなれど話しは尽きぬ  

33

明け方に書き出す手紙春を待つ  

34

芽吹く草木も微笑むように 
 晩

35(花)

米寿越え電動カーの花見かな

36

終はりよければ極楽の春  

 

<2023 年4月 26日〜2023年8月3日>