せっかち歌仙・その53


<葱の一抱えの巻>


     茶目猫・逐電・山八訪・良流娯・多摩のO脚・紅蓮・晩菊・長者巻・永井人生


 

発句

新聞紙はみだす葱の一抱へ   
茶目猫

脇句

待ってましたと寺は寄せ鍋    
逐 電

権禰宜の掃く玉砂利に塵もなく  
山八訪

ボール追いかけ小川飛び越え  
良流娯

(月)

国防も原子力も後の月  
多摩のO脚

夜寒に祈る世界の平和  
紅 蓮

(初折裏)

秋深し争い事は絶え間無く   
晩 菊

耐第8波とろろそば喰う  
長者巻

もしもしのトーンで全て分かる君  
永井人生

10

駒音交わす新古の鬼才  

11

宴席でいやさかの後なにわ節  

12

村人こぞり豊年祭り   

13(月)

どんどどん月出ずるまで太鼓なる  

14

花野にひびく子らの甲声  

15

置き去りの青い水筒雨に濡れ  

16

錆びてゆけども今が青春   

17(花)

山桜散り際も又潔し 

18

蜂の巣に吠え跳ね飛ぶ子犬  

(名残折表)

 

19

剪定の庭師が空を切り揃へ  

20

そらみたことか春の泥ふむ  

21

冷戦の終結の島波静か  

22

暗黒の夜の満天の星  

23

画布に見ゆ塗り重ねたるその一世(ひとよ) 

24

南仏にいきマティスに出会う  

25

長旅の果てに幸有るプレゼント  

26

片恋の熱老いてなお燃ゆ  

27

本命が二人のバレンタインデー   

28

季節を問わぬ推し活の女子  

29(月)

四階の母に手を振る月の道 

30

えんま蟋蟀踊り場で鳴き   

(名残折裏)

31

ニワトリの飼料高騰暮れの秋  

32

願い叶わじ力によっては  

33

混声の歌声響く大ホール  

34

客も味方におおシャンゼリゼ  

35(花)

大通り桜綻びいいことが

36

心も弾み春めく世間


 

<2022 年12月 1日〜2023年3月5日>