せっかち歌仙・その50


<金木犀の巻>


     茶目猫・良流娯・長者巻・山八訪・紅蓮・逐電・晩菊


 

発句

窓開けて金木犀の風通す  
茶目猫

脇句(月)

月の光の田園に降る  
良流娯

第三

虫すだく草むらの露かがやきて  
長者巻

朝の挨拶交う路線バス  
山八訪

初めての定期に心うきうきと  
紅   蓮

ここぞと転びつかむ要職  
逐   電

(初折裏)

幸せな巡り合わせの摩訶不思議  
晩   菊

終の棲家に隠れ住む女(ひと)  

遠距離も障害はなしオンライン  

10

震度五弱に警報の鳴る  

11

妾宅の子らは静かに泣き出して  

12

映画「ダンボ」に心ふるわす  

13(月)

ガネーシャの折れた片牙笑う月  

14

飲み友集う秋の夕暮れ  

15

はるかには初冠雪の富士を置き  

16

次々と湧くパラグライダー 
 良

17(花)

山の際(ま)に風まかせゆく花ふぶき  

18

便りのとどく里はゆく春 
 山

(名残折表)

 

19

手作りの蓬の餅のなつかしき  

20

烏骨鶏なき後は鶏卵  

21

独り身は手間を省いて目玉焼き  

22

サスティナブルって言えば済み  

23

熱帯夜枕元にもマイボトル  

24

組体操を崩す夕立  

25

腰低く生きだんだんと利己主義者  

26

欠点あれど心惹かれる 
 紅

27

共白髪歩む峠に秋深む   

28

揺れて輝く紅葉眺めて  

29(月)

身に享くる青き波動や月今宵  

30

新小豆炊く香の満ちる朝    

(名残折裏)

31

枯れ枝に鳥戯れてひと葉散る  
 長

32

ニューモ手にして勇むアイドル  

33

最期には欲・見栄もなく浄化され  

34

孫の親は子東風舞いもどる  

35(花)

咲く花を家族揃いて眺めたり  

36

生け垣超えてしゃぼん玉舞ふ  

 

<2021 年9月 18日〜12月1日>