せっかち歌仙 その49


<囀りの巻>


     紅蓮・茶目猫・逐電・良流娯・長者巻・晩菊・山八訪


 

発句

囀りに囲まれながら畑仕事  
紅   蓮

脇句

背山妹山笑みかはしつつ  
茶目猫

第三

手の平で春雨を受け歩き出し  
逐   電

宛名滲んだ絵手紙届く  
良流娯

5(月)

酔いしれて見上げる月に話しかけ  
長者巻

家路辿れば鈴虫の声  
晩   菊

(初折裏)

海染まり秋夕映えの新世界  
山八訪

丁稚の悩むこいはんの理科  

付け文を見せ合ふ姉妹奥座敷  

10

コロナなければ温泉がよし  

11

出かけたいけれど足留めこの辛さ  

12

禁酒を誓い胃カメラでバレ  

13(月)

月涼しライトの要らぬ散歩道  

14

馬籠妻籠に薫風渡る  

15

連休は映画三昧家ごもり  

16

一雨過ぎて春の虹立つ  

17(花)

花堤妾宅めがけてまっしぐら  

18

鳥雲に入る拾ふ貝殻  

(名残折表)

 

19

ふるさとは遠くはるかに春霞む  

20

馴染みし山河ふと思い出す   

21

我が星も四十六億齢重ね  

22

褒め上手の弁日々新たなり  

23

滾々と小石躍らせ湧清水  

24

ないものねだりの島のくらし  

25

何もかも有れば有ったで迷いごと 
  晩

26

獲物に魅入る蜘蛛の片恋   

27

竜に乗りゲドと旅する夢の中  

28

帙入りの巻繰れば虫の音   

29(月)

満月にこの地を去りぬかぐや姫  

30

十日の菊の残り香を聞く  

(名残折裏)

31

祖母宅で気鋭も食べるふかし芋  

32

人形座る幼児用いす 
 良

33

ゆるむ顔マスクに隠し足早に   

34

そっと見上げる夜空霞みし  

35(花)

宴無く花散る中の寛永寺  

36

友と逸るる義士祭かな

 

<2021 年4月1日〜6月10日>