せっかち歌仙  その44 


<白樺の林の巻>


        茶目猫・良流娯・逐電・ターボ・多摩のO脚・紅蓮・山八訪・長者巻・晩菊    


 

発句

白樺の林小暗し秋の暮  
茶目猫

脇句

釣瓶落としの日毎南へ  
良流娯

第三(月)

新月や朔太郎の犬宙に吠え  
逐   電

下校児たちになつく野良猫  ターボ
ターボ

ハンモック島で聞き入る日本の歌    
多摩のO脚

夏祭りには木遣りに太鼓  
紅   蓮

(初折裏)

デイオーとバナナ積み出す港町  
山八訪

マチルダ想い夢の中へと  
長者巻

目覚めれば嬉し涙の明けの朝  
晩   菊

10

母は娘にまた叱られて  

11

白髪染めやめたる友にハッとして  

12

鏡池には逆さ富士あり  

13(月)

天空に浮かんだ月が尾根照らす  

14

色なき風と戯れる子ら 

15

赤とんぼ稲穂の波に溶け込んで 

16

存在知れぬ書類の如し  

17(花)

花びらの落ちて野点の茶に浮かぶ  

18

菜の咲く椀で独り春酒  

(名残折表)

 

19

遠足の一列過る村役場  

20

弁当食べておやつ交換  

21

落とし穴掘れば貝塚休火山  

22

矯めつ眇めつ出土品嗅ぐ  

23

向日葵の空まで伸びて七変化  

24

息もつかせぬ艶やかな舞  

25

異国では森鴎外も恋に落ち  

26

舞姫とはと探る悪趣味  

27

さはされど純な思いも見え隠れ  

28

戦後と言うもいつも戦前  

29(月)

いつまでも変わらず届け月明かり  

30

秋夕焼が首里城包む 
 茶

(名残折裏)

31

台風に備え今ではスマホ族  

32

イライラ募る牛歩戦術  

33

歯抜かれて早口言葉舌もつる  

34

養生大事暫しの間  

35(花)

米寿姫しずかに去りぬ花の雨  

36

短き春にも想いは果てなく  

 

<2019年10月30日〜12月14日>