せっかち歌仙 その4      

<河 鹿 の 巻>

 


紅蓮    晩菊     良流娯   長者巻  少艶   山八訪 


 

発句

河鹿鳴く谷間の里の夜更けかな

紅  蓮

脇句

 流れ涼風(すずかぜ)安らぐ心

晩  菊

第三

潮の香に古き思い出誘われて

良流娯

 岩陰にしむ言霊つむぎ

長者巻

5(月)

音もなく欠けゆく月の恐ろしさ

   

 一角獣 (Unicorn) の握り(knob)が秋と呟く

山八訪

(初折裏)



そぞろ寒首を竦めて独り言

 「熱燗 おでん 愛が欲しい」と

ハイヒール踏み石に紅四阿(あずまや)に

10

 ママのまねするいたずら娘

11

魔女の子も年頃になり立ちぬ

12

 初心に帰れ金権五輪

13(月)

姫もまた月にて物見戦うを

14

 霧の晴れ間に手に汗握る

15

枝折りして行く人もなし漆紅葉

16

 シックハウスに暴れるアトピー

17(花)

花筏ただよう岸辺穏やかに

18

 笑いさざめく野遊びの子ら

(名残折表)



 

19

原っぱに夕餉の匂い春の宵

20

 お土産さげて家路を急ぐ

21

朝帰りした翌日の機嫌取り

22

 知らんふりして爪を研ぐ猫

23

憧れのラメ入りを借りそっと塗る

24

 唯それだけで煌めく心

25

年を経しあのMISTRESS今 いかに

26

 退廃の色首筋に這う

27

然すれども酒の癒しで浮立ちぬ

28

 温泉・ビール至福の時間

29(月)

月代や白夜のごとく影つくり

30

 停電の恵あふれる星河

(名残折裏)



31

台風の思い出なりし蝋燭雨戸

32

 肌に粟立つ円朝の声

33

好き嫌い何も言わぬは有難き

34

 ちょっと甘えて静かに眠る

35(花)

朝夕に花待つ頃は夢うつつ

36

 熱きこころを言葉の箱に

 
 <2003年6月14日〜7月8日>