せっかち歌仙 その37


潮だまりの巻>


                  紅蓮  逐電  茶目猫  長者巻  良流娯  晩菊           


 

発句

子ら遊ぶ潮だまりにも秋の風    紅   蓮

脇句

勝ち相撲でも濡れる尻餅   逐   電

第三(月)

鳥けもの月夜に浮かれ回るらむ   茶目猫

杜の精霊太古の響き   長者巻

小糠雨蜘蛛の巣光る木々の間に   

良流娯

さみだれ傘を傾げ眺むる   晩   菊

(初折裏)

交差点久闊を叙し立ち話   

時空を越えてふいにときめく  

繰り返す千変万化恋と嘘   長

10

規則正しく定時に退社  

11

寛いで囲む雀卓先ず一杯  

12

金曜の夜はカプセルホ テル   

13(月)

ひとり寝は楽しからずや寒の月  

14

田鶴鳴き渡る成金の土地  

15

恩返ししつぺ返しの気味ありて   

16

もり友の後かけ友と会う   

17(花)

迷い道灯りたどれば残花あり  

18

夜明け待ち兼ね飛ぶ朝燕  

(名残折表)

 

19

長き日や中近東に弾すだれ  

20

すぐとなりでは核・ミサイルも  

21

トランプと似たり寄ったりキムジョンウン   

22

我慢較べのカードゲームか  

23

蚊と蚋を払い除けつつ庭木処理   

24

下手な刈り上げ夏帽隠す  

25

日は流れ疾走の果て新記録  

26

きつく締めてと渡す靴紐  

27

踏切のこちらとあちら平行線  

28

遅刻の夢に飛び起きる朝   

29(月)

煌々と欅の上を渡る月  

30

こんな時刻に蜩の声  

(名残折裏)

31

住職と檀家が悩む野分晴れ  

32

Let it be と口ずさみつつ  

33

ケセラセラとハモリ歌う芭蕉翁  

34

囀りの中はるかな虚空   

35(花)

緑児と共に見上げる夕桜  

36

春の炉囲み再会の宴  

 

<2017 年8 月17日〜9月21日>