せっかち歌仙 その31

<卒業の巻>

       茶目猫  逐電  長者巻  紅蓮  晩菊  良流娯        


 

発句 好きな言葉かべに残して卒業す   
茶目猫
脇句 せざる告白増す春愁い  
逐   電
第三 雪の果て北斗をめざし走るらん  
長者巻
役目を終えて退くものも  
紅   蓮
5(月) 様々に思い巡らす月見酒     晩   菊
初めてのこと始める初秋  
良流娯
(初折裏)
天高く立志伝皆山を越ゆ  
懐深く秘めたる想ひ  
長旅の果ての逢瀬に胸はやる  
10 来し方辿り行く末憂う   
11 進化速人工知能人追えず  
12 ゆるり楽しむ寄り道の味  
13(月) 夜通しの胡弓の音色盆の月   
14 苦瓜の這う学び舎の壁  逐
15 居酒屋で今夜の肴(あて)はチャンプルー   
16 何はともあれ先ず生ビール  
17(花) 北国へ花の盛りに会ひに行く  
18 土産の菜飯弁当箱へ  
(名残折表)
19 路地ごとに子の指す方へ春散歩  
20 瓦礫の向う空近くなり  
21 天災の脅威の前に立ちすくみ  
22 羊とはがね音楽の森  
23 毛糸編む手を休めてはストレッチ  
24 何時の間にやら時雨るる気配  
25 足音を耳欹てて待つ夜なり  
26 四角の皿を円く拭きつつ  
27 然り気無き仕草気になる思い人 
28 歌舞伎役者の所作美しく  
29(月) ゆらゆらと波間を渡る宵月夜  
30 もう限界と冬仕度の日 
(名残折裏)
31 夜学子の昇給に沸く自習室  
32 チャイムの音に我にかへりて  
33 半世紀ぶりに時空を飛び越える

34 夢の中へと何をさがしに 
35(花) 翁の目声も活き活き花の昼

36 初蝶の舞う微風の庭 
 
<2016 年3月28 日〜4月28日>
 


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