せっかち歌仙 その30


<群雀の巻


                   茶目猫   晩 菊  紅 蓮    長 者巻  逐電  良流娯          


 

発句

枯れ草の土手からわっと群雀    晩   菊

脇句

富士をはるかに霜柱立つ   茶目猫

第三

漢方を飲み干した後宿を出て   逐   電

行く先々になつかしき友   紅   蓮

5(月)

振り仰ぐ遥か異国の上り月  

長者巻

渡り鳥来て池人憩う   良流娯

(初折裏)

色変へぬ松のほとりの水の音  

慕いし人の心は何処  

メールより文したためて送るらん  

10

乗り手を待って勇む早馬  

11

行けるなら維新の頃を覗きたし  

12

ドラ公客だ稼いでおいで    

13(月)

様々に夢巡らせて月涼し  

14

川の流れに香魚きらめく  

15

住職が園児を叱る村の寺  

16

育ジジババは東へ西へ  

17(花)

花前線越えて進めば二度たのし   紅

18

自転車こげば春闌く岸辺  

(名残折表)

 

19

風に乗る胡弓の調べ柳絮飛ぶ  

20

霞む遠山借景にして  

21

白き船大海原を突き進め  

22

つけを払わず笑む離任技師  

23

冬天や佃島にもビルの群れ  

24

冷たき指に熱燗の杯  

25

ふと見ればのれんを濡らす夕時雨  

26

頃合ひをみて連れ立ちてゆく  

27

声の休暇君は野の花見ており ぬ   

28

雪見てはしゃぐ若人の群れ  

29(月)

塾帰り励ますように宵の月  

30

垣根を超える柿の実たわ わ    

(名残折裏)

31

障子貼る光さざなみ立つ夕べ  

32

冬支度終え寛ぐ座敷  .

33

来年の決意を記す手帳開く  

34

伸び代無限プロは無理でも  

35(花)

花曇り歩いてもなお午後の道  

36

何事もなく永久(とわ)に長閑に  

 

<2015 年11 月15 日〜12月16日>