せっかち歌仙 その29


<風の庵の巻>


                茶目猫    逐電   良流娯   晩 菊  紅 蓮  長 者巻           


 

発句

ひまはりを垣根としたる風の庵   茶目猫

脇句

義父の背を押す昔傾城(マドンナ)    逐   電

第三

大人にはまだ程遠し夕暮れに    良流娯

耳を澄ませば虫の音ばかり   晩   菊

5(月)

岸辺にて月の出を待ちたたずまん    

紅   蓮

雲流れゆき山澄みわたる   長者巻

(初折裏)

食パンを齧り夜長の立志伝  

天窓の星夢語り合ひ  

久方の逢瀬に何時か夜明け方  

10

噴火の夢が正夢と知る  

11

列島の闇の動きに耳すます  

12

海を渡って自然たの しむ  

13(月)

冬満月見知らぬ街を貨車過る  

14

消えてまたつくイヴの電飾  

15

車停め漁火見入る峠道   

16

嵐がくればなすすべもなく  

17(花)

目一杯咲いて見事な花吹雪  

18

柳に燕水郷の街  

(名残折表)

 

19

熱の子に騙されてやる万愚節  

20

影もかたちも市民の不在  

21

呆れ果て我関せずと揚羽蝶  

22

楽しみに待つ収穫の時  

23

たぷたぷの西瓜をかじりデトックス  

24

サラリーマンのアカを落として  

25

つやつやと手足伸びたる島娘  

26

胸を整え大根を売る 

27

見染められ異国への旅波静か  

28

ワイン片手に仲睦まじく  

29(月)

風わたる川面に揺れる星月夜  

30

伊豆の岬に四十雀鳴く  

(名残折裏)

31

夜学子の電話で里の父も泣き  

32

目覚めてはるか茜の希望  

33

多事多難なれど堪えて癒し酒  

34

しのびよる影夜ごとの予知夢  

35(花)

茣蓙敷いて飽かずままごと花の昼     

36

永久の平和を願う春の日  

 

<2015 年6 月7 日〜9月28日>