せっかち歌仙 その27


<秋麗(うらら)の巻>


                   長者巻  晩菊  良流娯  逐電  紅蓮  茶目猫          


 

発句

風に舞う旅人の夢秋麗(うらら)  長者巻

脇句

  里山行けば蜩の声  晩   菊

第三

林ぬけやっと間に合う月の出に 良流娯

 かたく握った母のおにぎり  逐   電

5(月)

しあわせな時の記憶はとどまりぬ   

紅   蓮

 襟にしばらく赤い羽根挿す  茶目猫

(初折裏)

この節は受けぬ還暦ちゃんちゃんこ 

 君追いかけし年甲斐もなし 

空っぽの指定席あり夜の汽車 

10

 お上りさんも早なまり消え  

11

潜(かづ)きてはまた流れゆき都鳥  

12

 転戦転走海かけぬける    

13(月)

波しぶき冬三日月も震え居り  

14

 露天に雪灯立ち昇る湯気  

15

寅さんに憂き世忘れて泣き笑い  

16

 スマホ片手によその世界へ   紅

17(花)

先生の健啖を知る花の宴   

18

 春日で満たす空の重箱

(名残折表)

 

19

柔らかに草木を撫でて光る風  

20

 音なく進む銀色の船

21

弊社より御社の秘書のちょべりぐで  

22

 アドレス消して新しい道  

23

気が付けば池に初鴨来てをりぬ  

24

 秋薔薇を手に母を見舞って  

25

はらり散る細き枝からまたひと葉  

26

 はたと感じるものの哀れを  

27

来し方の親子関係如何なるか  

28

 異母妹宅で囲む雀卓   逐

29(月)

にぎやかに月見もかねて集まらん  

30

 地球(テラ)を浮かせて虫の鳴きをり  

(名残折裏)

31

山裾の慎ましやかな草紅葉  

32

 解散風よ竜巻となれ  

33

わが法師お椀の舟で漕ぎ出さん  

34

 待つ人も無し浦島太郎  

35(花)

乙姫の羽衣めくや花の雲  

36

 春光あびて出発(たびだち)祝う  

 

<2014年10 月2 日〜11月20日>