せっかち歌仙 その26


<落とし文の巻>


                   茶目猫    紅 蓮    晩 菊  逐 電  長者 巻   良流娯          


 

発句

落とし文開けば風の音聞こゆ
茶目猫

脇句

 たまの帰省に心浮き立つ   紅   蓮

第三

あの眺めあそこ廻ったあのあたり   晩   菊

 四駆にもたれ食べる腸詰   逐   電

5(月)

コッフェルの湯気たち昇る銀の月    

長者巻

 どんぐり笛に大人も夢中   良流娯

(初折裏)

楽隊の少女はじける文化祭  

 顔のペイント涙をかくす  

君んちと僕んちつなぐ水道管  

10

 流れの末は誰も判らず  

11

数々の不義理を思う日暮れ時 

12

 人情をのせ語る文楽    

13(月)

路地照らす四万六千日の月   

14

 祈ってみても叶わぬ願い  

15

何にせよ戦世だけは御勘弁  

16

 誇れるものをしかと抱きしめ  

17(花)

花の雨メロンパン今焼けました  

18

 マスクをせずに球根を植う   良

(名残折表)

 

19

春雷がところかまわず大暴れ   紅

20

 主守りし和犬いぢらし  

21

妾宅の庭より小判ざっくざく   

22

 兎角浮世は有りえぬことも  

23

空想の翼広げて日の盛り  

24

 濃い影落とす風鈴の音  

25

襟足に湯上りの香の女下駄  

26

 差しつ差されつ杯かたむけて  

27

シャイ故に素面じゃ言えぬ胸の内  

28

 猫化けに行く赤味噌の蔵  

29(月)

格子窓空にぽっかり盆の月  

30

 家屋を倒し台風が行く  

(名残折裏)

31

黄昏に稲田いちめん耀きて  

32

 陸島々を一望の幸  

33

丘こえて自転車で来る航空便  

34

 真澄の空に囀りを聞く  

35(花)

山降りて花人となりほろ酔いに 

36

 ひざを枕に春の夢見し  

 

<2014年6月13日〜7月16日>