せっかち歌仙 その25


<赤 と ん ぼ の 巻>


                 茶目猫   紅蓮      晩 菊  逐 電  長 者 巻  良流 娯         


 

発句

裏山の風よく見ゆる赤 とんぼ  

茶目猫

脇句

 いわし雲わくふる里の空  

  

第三(月)

明烏声する方に残る月  

  

 祝辞の稿を汚すうたた寝   

  

夏神楽童べ陣取る 舞台下    

長者巻

 美声響いて川風涼し  

良流娯

(初折裏)

かしましい夜に張り切る蟾蜍(ヒキガエル) 

 紅

 組んず解れつ浮き葉の褥   

わが部署の吉永小百合茶を配り  

10

 色いろ有ってそれが楽しい  

11

失敗は次に活かして引きずらず  

12

 老いて悲しき母の苛 立ち  

13(月)

寒満月すべて話すといふ覚悟 

14

 ほったらかしの長湯にあたり  

15

白ワイングラス傾げて人心地  

16

 馴染んだ店も倦むことしばし  

17(花)

ひきだしに海の図鑑や花の雨  

18

 イルカに会いに春の船旅    

(名残折表)

 

19

永き夕高座にのぼり笑いとる   

20

 百名山を踏破十年  

21

おにぎりの手に小雨降る記録会  

22

 急かず焦らず安全第一  

23

待ち過ぎて鳥が先取りさくらんぼ  

24

 鯵鯖焼いてやけ酒の宵  

25

出漁の旗に手を振る島娘 

26

 一人つぶやくアイミスユーと 

27

密やかに思い悩みし若き日々  

28

 とは言うものの金の惜しさよ   

29(月)

鈍色のたなびく雲に月かかる

30

 颱風去れど終わらぬ憂い  

(名残折裏)

31

流星と日和坊主に願かけて 

 紅

32

 巡礼古道てくてくと行く  

33

弟子筋はこぶしばかりの歌謡曲  

34

 鳴き交わしつつ帰り行く雁 

35(花)

花冷えにポットの紅茶有難き  

36

 風光る海ながめせしまに  

 

<2013年9月28日〜10月24日>


 

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