せっかち歌仙 その24

<風 の 午 後 の 巻>

 

   茶目猫  逐電  長者巻  良流 娯  晩菊  紅蓮     


 

発句

手のひらに青蛙ゐし風の午後  

茶目猫

脇句

 日がさしこむは梅雨の裏庭  

逐   電

第三

渓流の岩肌荒くかがやきて  

長者 巻

 電車に揺られ夢のかなたへ  

良流娯

5(月)

旅疲れ癒してくれし夕月夜     

晩  菊

 鮭の茶漬けのなつかしき味  

  

(初折裏)

でこぼこに家族ならびて 門火焚く  

 人影長きプラットフォーム  

二時間もひたすら想い待ったひと  

10

 恥の相違に離れるこころ  

11

ipadアプリを入れて古典読む  

12

 考えられぬ一昔前  

13(月)

縁側に盃ふたつ月今宵  

14

 秋思に沈む 友 呼びに行こ  

15

庵にて語らいつきぬ長き夜  

16

 一番鶏の声届く空  

17(花)

季節過ぎ花の絵手紙南より 

 良

18

 陸奥の国から蕗味噌送る    

(名残折表)

 

19

春深し古書店で買う鳥図鑑

20

 変色の地図宝島指す   

21

母の手でまた生かされし長襦袢 

22

 たれの変わりかほほえみし孫  

23

遠距離をものともせずに駆けつける  

24

 寸暇惜しんで 楽しむ逢瀬  

25

星空へ漕ぎ出していく蛍舟 

26

 余暇の歌い手 歌 う鼻歌  

27

豊作の今年の梅も採り終えて  

28

 じぇじぇと目をむく頭の冴えに  

29(月)

残月に向かって羽ばたくはぐれ鶴  

30

 新酒をあけてジビエ楽しむ  

(名残折裏)

31

絵日記の母に髭あり神 の留守  

32

 百観音に人の絶えざる  

33

富士山も世界遺産に仲間入り  

34

 水面に映る四季の移ろい    

35(花)

千年も花の宴をたのしめり 

 紅

36

 春愁忘れ心行くまで  

 

 <2013 年6 月13日〜7月2日>