せっかち歌仙 その23

<麺 麭 二 斤 の 巻>

 

        茶目猫     晩 菊     紅 蓮     長 者巻    逐電    良流娯   


 

発句

春一番提げて重たき麺麭二斤     

茶目猫

脇句

 日永の卓に子を叱る声   

  

第三

卒園の悦び胸に迫り来て   

  

 成長ありやと己に問う    

良流娯

5(月)

月明かし行く方向を見定めぬ     

  

 金木犀の花匂うころ   

長者巻

(初折裏)

住職が馬の足となる村芝居 

 小町娘の忠治に沸いて  

楽しみは追っかけ人の置き土産   

10

 心こもりし紅の薔薇

11

 花園に腰巻お仙 再 来す  

12

時は過ぎても血が騒ぎたつ    

13(月)

 踊り明かす月出て月の沈むまで  

14

踏む大足に 鳴か ぬこおろぎ

15

 明け方の静けさ増してそぞろ寒 

16

多摩川沿いに人々の群れ   

17(花)

 目を病みて車窓より見ん花の昼 

18

初音ミクらも 囀 り競う 

(名残折表)

 

19

子の嘘に笑む春愁の令 夫人 

20

 だまし騙されいづれが上手(うわて) 

21

下手(へた)するとアベノミクスも ちと怖い 

22

 大忙しのデイトレーダー 

23

泡はぜて 凍てる 路地裏星ひとつ 

24

 ちょっと寄ってと呼び止められて   

25

くゆらして紫煙奈落の匂ひせり 

26

 我が火の国は 掘 れば湯の出る 

27

温めた想いは何時か彼のひとに  

28

 もう手遅れとそっと呟く 

29(月)

月をほめのち無沙汰 わび長電話

30

 赤き送り火ふる里の宵 

(名残折裏)

31

旧き友秋刀魚肴に酌み交わす   

32

 三陸の海一面の凪

33

金色の飛行機雲に足をとめ 

34

 春夕焼けを暫し楽しむ 

35(花)

正門の 枝垂れ桜 に 迎えられ 

36

 風かがやきて子ら駆け回る  

 

<2013 年3月18日〜3月30日>