せっかち歌仙 その22

<に ぎ る 手 と 手 の 巻>

 

紅蓮    良流娯    長者巻     逐電    茶目猫       晩 菊   


 

発句

元日やにぎる手と手のあたたかさ  

紅  蓮

脇句

 よちよち歩き若菜摘む真子  

良 流娯

第三

.雪残る黒き山なみ 鮮やかに   

長者巻

 落武者集いかわす目配せ  

  

5(月)

銃眼の湖城に月の射しわたる     

茶目猫

 夜のしじまに香る木犀  

  

(初折裏)

色水でごっこ遊びの秋日和   

 青いレモンのあの子を想ふ  

農学部 皆すくすくと 反抗期  

10

 炎天の海 霞む 帆船  

11

緩々と何を思うか昼寝人   

12

 夢とうつつを行つたり来たり  

13(月)

満月の夜に生まれるファンタジー  

14

 干物女も祈る流星    

15

ぞっとする大賑わいの蕎麦の花  

16

 牛乳を手に駆けるスジャータ     

17(花)

朝櫻けふもどこかで嬰(やや)生まれ 

18

 高き梢に囀りを聞く  

(名残折表)

 

19

冴返る美しき空に赤いヘリ 

 良

20

 今日も必死の捜索続く   

21

嘘まとめ少女は帰る 朝の道

22

 行く手をはばむ艱 難辛苦

23

夕闇の迫る軒先吊り忍  

24

 真竹騒めく嵯峨野の庵  

25

凍てる夜は熱燗つけておばんざい  

26

 今度はいつと堪えて聞かず   

27

永らえて 如来の ごとく笑みうかべ  

28

 仁侠道で怒る両肩    

29(月)

寒月光背中の龍も哭いてゐる

30

 密かに咲きし侘助の花 

 晩

(名残折裏)

31

湯気立てる茶釜のほかに音はなく

32

 目覚めて気づく真白な世界  

33

晩霜の野面に遊ぶ群雀  

34

 大地にひそみ 凝っ と動かず  

35(花)

言い勝ちしのちの寂 しさ 花吹雪  

36

 約束の地へ鶴の引きつつ  

 

<2013 年2 月1 日〜2月20日>