せっかち歌仙 その21

<零 余 子 の 巻> 

 

 茶目 猫  紅 蓮   晩菊  良 流娯  逐 電   長者巻


 

発句

思ひ出をひとつ こぼさず零余子とる  

茶目猫

脇句

 秋空見上げ故郷しのぶ  

 紅  

第三(月)

半月の照らす田畑は荒れ果てて 

 晩  

 野道で遊ぶうりぼうや猿 

  良流娯

夏の雨少年濡れて走らざる  

 逐  

 天地鳴動雷神来たり  

長者巻 

(初折裏)

不意をつく暗き夜なり人恋し  

 紅

 ヘッドライトに浮かぶ灯台  

 茶

あの時に今の自分でもどりたい  

 良

10

 さは然り乍ら遠 日の夢  

 晩

11

法話にて領土問題語らるる   

12

 煩悩を断ちみほけの道   

13(月)

二十日月朱くのぼ りぬ死者の家  

 茶

14

 りんどうの花 そっと寄り添う  

15

肌寒の心に残る濃紫  

16

 勝った負けたで過ぎる六場所  

17(花)

野球帽かぶり祝宴花の昼   

 良

18

 うららかな日に奈良路への旅  

(名残折表)

 

19

良き友と語らく暮遅し  

20

 鐘の余韻にあくびする山  

21

若葉風頬を擽る昼下がり  

22

 さっと過ぎゆくロードレーサー  

23

真夏日の街路樹の影くっきりと  

24

 鬼も十八また叱られて  

25

ぱあなしのじゃんけんぽんでおつかいに   

26

 意中の人にばったり出会う  

27

ときめいて見上げる空に流れ星  

28

 秋ともし読む母の絵手紙 

 良

29(月)

書割の月軽(かろ)くして井戸に落ち 

 逐

30

 旅一座ゆく水澄む 岸辺  

 長

(名残折裏)

31

アルバムに家族の歴史ひそむなり  

32

 ほそ道に立つ栗 も四代目  

33

細胞を新しくする希望わく  

34

 小鳥囀る山家の夜明け  

35(花)

世直しの夢をたくして花祭り  

 長

36

 吾子の背を吹け御代の春風  


<2012年10月26日〜11月21日>