せっかち歌仙 その18

<春 林 の 巻>

 

茶目 猫   晩菊  紅 蓮    長 者巻  逐電  良流娯  少艶         


 

発句

春林や転がるやうな笑ひ声

茶目 猫

脇句

 余寒(よかん) 吹き飛ぶ娘盛りよ 

 

第三

渚にて帰雁の群れを見送らん

 

 茜に染まり鐘の音渡る

長者 巻

5(月)

月あかく香具師堂々のゾリンゲン  

 

 鼻に綿菓子嬉し秋の夜

良流 娯

(初折裏)

長生きも芸のうちかや山粧う

 

 「時は過ぎる」とシャンソン歌ひ

凍滝に想いひとまず預けたり

10

 封印を解く文の来たりて

11

送信をためらう友の背中押し

12

 艶福家にて教頭先生  

13(月)

風涼し受月浮かび盃を愛で

14

 釣瓶落しの魯山人かな

15

柿照りの一日古刹に遊びをり

16

 静けさの中家路を辿る

17(花)

遠来の客待ちわびて花の宴

18

 古道を行きて雛流したり

(名残折表)

 

19

すもう字の ごと き実印春愁

20

 声には出さずチェストと叫び

21

吾輩はあの有名な名無し猫

22

 麦酒を飲んで夢心地かな

23

目覚めても尚酔い残る昼下がり

24

 ゼブラゾーンに影のゆらゆら

25

鍵盤で喜び語るピアニスト 

26

 望遠鏡でのぞく番長

27

雨だれの甘い囁き雨宿り

28

 石をも穿つ消えぬ足跡

29(月)

波音の砂洲に沁み込む十三夜

30

 浜風静か紅葉且つ散る

(名残折裏)

31

天高し一眼レフが旅の友

32

 お堂に一夜節に一条(ひとすじ)

33

地卵が 地蛸の御 礼 邑の春

34

 無心にさがす白のげんげん

35(花)

念力や花七色に化粧せん

36

 辻に人待つ春夕べかな

 

<2008年2月25日〜3月16日>