せっかち歌仙 その14

<春 立 つ 日 の 巻>

   

         茶目 猫  長者巻  紅蓮   少艶   晩菊   良流娯  


 

発句

雨粒のきらめく風樹春立つ日

茶目 猫

脇句

 ふわり黒髪しらうおの指

長者 巻

第三

四月来て新たな一歩印すらん

 

 山道登りなじむ地下足袋

少  艶

5(月)

先導の強力の背に月冴えて

  

 くるくる回す紅葉のしおり

良流娯

(初折裏)

山あいの棚田輝く秋の水

 星の尾映す隠れ沼あり

見しままに君語るまじきょうの夢    

10

 平和な世にて結ばれたしと

11

あの想い今は昔となりにけり

12

 時の流れは 心 洗いて

13(月)

一笛の舟の行方や湖の月

14

 空高く凪ぎ雁渡りをり

15

名作を開いてみたき夜長かな

16

 春は曙内裏華やぐ

17(花)

花の頃綿毛のごとく旅立ちぬ

18

 霞たなびく里道のどか

(名残折表)

 

19

安宿で朝寝むさぼる夢追いて

20

 聖火も消えてローマへの道

21

ナムマイダ祇園囃子の鐘の音

22

 時経て出会うなつかしき人

23

ときはなす秘めたせつなさ歌に込め

24

 胸に届けと 望 み託して

25

狂喜する九回裏のホームラン

26

 願い叶えどなほ書きつづけ

27

アカデミー賞の行方が気になりぬ

28

 ハウルの動く城は いずこに

29(月)

月あかくバーナムの森粛々と

30

 ゆり椅子ゆらし燈火親しむ

(名残折裏)

31

夜長し家遠くなりあさぼらけ

32

 空白々とビルの谷間に

33

今日もまた廊下とんびが餌を狙う

34

 れんげ畑でチャンバラごっこ

35(花)

奉行役桜吹雪でしめるかな

36

 片肌脱げば暖かな風

 <2006年2月14 日〜3月14日>