せっかち歌仙 その13

<菊 の 露 の 巻>

 

   少艶    茶目 猫     晩菊   長者巻     紅蓮    良流 娯 


 

発句

朝まだき濡れる我が袖菊の露

少  艶

脇句

 裾ひるがへす草雲雀の道

茶目猫

第三(月)

涼やかに 集く虫 の音月落ちて

  

 闇に囲まれ凝つと動かず

長者巻

無限なる宇宙の駅の眺めかな

  

 始まりはいつ時の不思議さ

良流娯

(初折裏)

告白をされて戸惑ふ同窓会

 譜めくりしつつ胸血高鳴る

めくるめく指の秘芸のアルゲリッチ

10

 残る味わい心潤す

11

一杯のグラスワインに頬ゆるむ

12

 初海外の古都の街角

13(月)

三尺の窓から覗く寒の月

14

 万華鏡には雪の結晶

15

政冷の溶解を待つ浅き春

16

 西安の地に風かがやけり

17(花)

旅に出ん花片舞い散る絹の道

18

 降り立つ女の手に春ショール

(名残折表)

 

19

約束の男来ぬまま日が暮れて

20

 気儘に生きるシングルライフ

21

ロハス系サプリメントにジム通い

22

 何はともあれ 急 かず焦らず

23

昼寝時ただ聞こえるはラジオだけ

24

 戦争終結告ぐる日のあり

25

筑波嶺の峰より落つる高御座

26

 山麓に湧く混声合唱

27

睦まじく 鳴き交 し合う 鴨の群れ

28

 世はせわしくも夢空を越え

29(月)

病窓の満ちゆく月に励まされ

30

i Podで聴く秋 桜の歌

(名残折裏)

31

晩鐘にひかりを残す木守柿

32

 あかあか燃える登り窯の火

33

古に思いを馳る黒織 部

34

 大和の寺で抹茶いっぷく

35(花)

肌ひかる湯ぶねにはらり散る桜

36

 連歌と美酒の春の宵かな

 <2005年10月15日〜11月2日>