せっかち歌仙 その10


<霜 柱 の 巻>


 少 艶     紅 蓮     晩 菊     良流 娯    長 者 巻  


 

発句

さくさくと霜柱踏む老いの坂

  

脇句

 歩みをとめて寒椿見ゆ

  

第三

初稽古終えて宴は華やげり

  

 目も楽します若き歌姫

良流娯

5(月)

夕月に見惚れ誘われ裏路地へ

長者巻

 暖簾くぐりて人肌の燗

(初折裏)



秋深む誰ぞ恋しい旅の空

 新帰朝者は島田にひかれ

ハッと覚め髪に手をやりホッとする

10

 寒九の朝の身の引き締まり

11

これうまかあつあつめしに煮こごりよ

12

 障子に影絵団欒の燈が

13(月)

望月の微笑み嬉し花芒

14

 BGMは鈴虫の唄

15

長き夜に心に届くレクイエム

16

 電話かけるもともに声なし

17(花)

花見酒飲んで心もあたたまり

18

 梨園の曹司蝶々が虎に

(名残折表)



 

19

春風やじゃじゃ馬娘妻となる

20

 夢は膨らみ浮き立 つ心 

21

ランティエの船上パーティーナンパせん

22

 ガラスの吐息ヴェネチアの技

23

煌めいて朝日に溶け る薄氷

24

 純白の峰青空に映え

25

水音に清冽な無垢よみがえり

26

 雑事に追われまた積もる垢

27

時は今疾風のように過ぎ去りぬ

28

 金で買えぬは時ばかりにや

29(月)

しみじみと思い出語る月夜かな

30

 刈田の畦をそゞろ 歩いて

(名残折裏)



31

なんとまあ宿も決まらぬ秋の暮

32

 病に会いて路筋が見え

33

願わくは憂きことさらり気 も新た

34

 雪割草もそろそろ支度

35(花)

花びらの春の小川は旅の唄

36

 静かな湖面ほほなでる東風


  <2005年1月17日〜2月25日>