居酒屋 歌仙 その2

<呑 ん び り 歌 仙>

 

小六  長者巻  英世  八訪  銀次郎  柳樹


 

発句

悲しみを隠すことなく雲 の秋

小 六

脇句

 暮れなずむ街ひそむ冬の 香

長者巻

第三

あこがれてもってみたけどポケットベル

 英 世

 喧噪の浅薄静寂の不安

山八訪

5(月)

大歓声最終レースもツキは なし

銀次郎

 ためつすがめつパドックまでの夢

(初折裏)

里芋掘り手にも顔にも土ひかる

 煮 物の湯気に見る母の愛

柳 樹

嫌だったのがれられない子の宿命

10

 淀の三千力尽くすも

11

あのころを歌う横顔瓜ふた つ

12

 曲 のテンポに時代感じて

13(月)

月に舞う旅人の夢受月に

14

 木 枯らしの中巡る追憶

15

追いかけて引き離されて 息切れて

16

 かけひき知らぬ恋の結末

17

片男波松葉流れて帆掛船

18

 別れて気づくあの人のく せ

(名残折表)

19

週末の逢瀬の後の心の穴

20

 凍 てる闇に降る星は天の穴

21

あら哀しルージュに溺れ トコロテン

22

 つかむワラもなし師走の 長 者

23

晴れやかな睦月四日のうた 初め

 

24

 一 三月も止まぬ振り子の音

25

流し目に胸ときめかす福笑い

26

 軸決まれども馬券絞れず

27

迷い路もひとつ曲がって ラビリンス

28

 更に迷ってバーゲン破産

29(月)

存在の虚飾を暴く月あかり

30

 鞍 降ろしけりヤシの木陰に

(名残折裏)

31

灼熱の蒼澄みわたり馬が空を

32

 仰ぐ姿は早春の馬酔木

33

美しきバラに刺あり匂いあり

34

 目鼻をふさぎ手を縛りけり

35(花)

冬霧の呪縛に凍る雪月花

36

 即鑑賞の妙即創作の苦

 

<〜1994年4月>