居酒屋歌仙 その10 |
<霧
晴 れ て の 巻> |
紅蓮・少艶・山八訪・銀次 郎・長者巻・眉山 |
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発句 |
霧晴れてたどる稜線道遙か |
紅 蓮 |
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稜線に
出たら、
霧があがり、それまで見えなかった遠くの山々が見渡せた。道は山から山へ遙か彼方まで続いている。歌仙
も 終りのない山旅のようだ。秋の句。 |
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脇句 |
眼こらせば雁の文字見ゆ |
少 艶 |
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稜 線の彼方 に
点々と浮ぶのは、雁かそれとも飛行機の編隊か?老眼の度が進み、雁の文字もよく見えません。 |
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第三 |
虫の音にかれとこれとを聴きわけて |
山八訪 |
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少 艶先生が 眼
をこらすのであれば、八訪は耳をこらさなければいけないのでしょう。 |
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4 |
粉雪訪ふ庭草 の上 |
銀次郎 |
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空は鉛色、粉雪がちら つく 霜月
の朝、いかに耳を澄まそうとも物音一つ聞こえない。 |
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5(月) |
足跡のゆくへ彼 方に冬の月 |
長者巻 |
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新
雪のあと、森へ向かう獣の足跡の先に、こうこうと輝く月がある。 |
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6 |
寝て待つ果報狩人の夢 |
眉 山 |
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森
へ去った脱兎を追ってみても仕方あるまい。 こゝはゆっ くり骨休め。 |
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(初折裏) |
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7 |
化粧して笑顔でさらう百万票 |
少 |
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今
やテレビ時代。候補者
は化粧して百万弗の笑顔で票を集める。投票に行かず結果だけをみよう。「さらう」は「攫う」か「浚う」か。 |
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8 |
声は嗄れても心は枯れず |
紅 |
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夜8 時前宇都宮の駅前をとお りか
かると、最後のお願いをしていた。選挙でもはやりの風邪で
も、たとえ声は嗄れようと心の内には熱い思いを秘 めている、かな? |
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9 |
獄中の水洗の音メモ綴る |
銀 |
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口
では言えない切実な思いは手紙にする。弁護 士あてか恋人あてか。 |
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10 |
叶うことなき戯作者の恋 |
山 |
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自ら の恋物語を綴る獄中の劇作
者。その恋は叶うはずもなく、綴る物語は結末から始まる。 |
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11 |
焦がれても仮面でかくし道化役 |
紅 |
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ピ
エロは叶うことのない恋しい思いを仮面の下にかくして、笑いを演じている。 |
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12 |
手話ひそやかに紅葉照る径 |
長 |
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言 葉 のない恋人同士、思いのたけ
を熱くしずかに語りながらのそぞろ歩き。 |
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13(月) |
琵琶法師落ち行く先は吉野葛 |
少 |
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手 話 →身体障害者→琵琶法師→平
家物語→語る→落ちる→壇ノ浦→義経→静御前→吉野(国栖)→吉野葛。 |
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14 |
田舎訛で月を指さす |
山 |
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吉 野 は田舎ではないと叱られそう
ですが、本屋で谷崎「吉野葛」を買って読んでみることにします。 |
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15 |
教壇で凶弾を受け立往生 |
長 |
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授
業 中、突然の逆指名。意味もわ
からず、冷や汗、赤面、オタオタする新米教師を見てドット笑う悪童連。キビシイ! |
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16 |
柔肌貫く春の宵かな |
銀 |
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春 の夜 のしっとりした濃密な濡れ 場。 |
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17(花) |
ありし日の匂ひ秘 めたる花白し |
少 |
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不 倫?とんでもない。失楽園に非
ず。単に度胸のない男(三四郎の如し)の片思い。 |
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18 |
面影遠く陽炎の中 |
紅 |
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白 い花のような 女
性との思い出ははるか遠くに去り、その人の面影も今では陽炎のようにゆらゆらとぼやけてしまった。 |
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(名残折表) |
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19 |
カエサルの雄叫びなりや砂塵立つ |
銀 |
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カエ サルは迅速かつ神出鬼没。あっと
いう間に襲ってくる。 |
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20 |
襟を正して烏鷺を競り合う |
山 |
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争 いごとは、君子の囲碁のように、気
品のあるものであってほしいですね。 |
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21 |
荒波にもまれてもなお返り咲け |
紅 |
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人
生にはいろいろ不運に見舞われることがあるが、趙治勲のよう に、 あきらめずに返り咲こう。 |
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22 |
犇めく鮭によだれの羆 |
長 |
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帰 り 鮭なんていう言い方ありませんよ ね。 |
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23 |
人 の死は生きる者への投文か |
山 |
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あ る 訃報に接して。無念。 |
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24 |
この道一筋たすきを胸に |
少 |
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真 実 一路。クソ真面目は親譲り。 |
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25 |
官僚に 魂 消 る悲鳴聞えぬか |
長 |
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最 近 のニュースに接して・・・・・。 |
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26 |
低く見られし栄華の巷 |
銀 |
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昔 か ら官僚主義には鼻もちならない面
がありました。 |
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27 |
厄何ぞ飲む打つ買 うで三冠王 |
少 |
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斜 陽 ではない。日はまだ高い。
“ECCE HOMO”(もとジャイアンツ落合選手―42才)。 |
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28 |
くどき文句は胸に納めて |
紅 |
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入 団交渉も、最後に 一 花咲かそうと女をくどく時も、男は秘して語ってはいけない。 |
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29(月) |
公 園の愛撫の果てに月を見る |
銀 |
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一
所
懸命口説いて愛撫したが肝心なところで逃げられ、ボウ然とする。(含意・・・上から下まで愛撫していった
ら、ナント生理中だった) |
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30 |
想 いはめぐり どんぐりころろ |
山 |
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前 句
の異常な世界をまっとうな世界に戻すには、公園のどんぐりを借りるしかありませんでした。 |
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(名残折裏) |
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31 |
落ち葉踏み神社の境内かくれん ぼ |
紅 |
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汚 れ
なき子供の頃、近所のガキ大将らと、落ち葉やどんぐりが落ちている神社の境内でかくれんぼをして遊んだ。 |
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32 |
夕暮れて犬待ち人何処 |
長 |
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遊 び
ほうけてもどらぬ飼い主、空を見上げて待つ犬。 |
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33 |
謝恩会ホテルまちがう老教師 |
山 |
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なか なかこない待人には何か事情があ るも
のです。 |
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34 |
春風得意に言問う団子 |
少 |
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全 員
試験に合格したが、未成年故、ノンアルコール飲料で団子パーティー。一足先に「花より団子」。因みに、「春風得
意」とは、唐の詩人孟郊の「登科 後」(孟郊が科挙に及第した時の喜びを歌った詩)の句にある。 |
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35(花) |
隅田川水のあはひに花 の影 |
長 |
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鹹
水と淡水の出会うよどみに写る花影に風情あり。 |
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36 |
辛き言葉に甘き果 揺れる |
銀 |
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特 に吟者の解説はない。 |
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