エマノン歌仙 60巻記念


聖堂に光の巻>


    茶目猫・良流娯・逐電・長者巻・紅蓮・晩菊・山八訪・嗤己・多摩のO脚・柳樹・銀次郎・天遊  


 

発句

聖堂に光の満つる十二月    茶目猫

脇句

  島々巡る冬晴の旅    良流娯

第三

密偵が犬に手のひら舐めさせて   逐   電

 雨音途絶え深き闇底   長者巻

5(月)

山の端を照らせよ照らせ今日の月   

紅   蓮

 芋栗団子供えし夕べ   晩   菊

(初折裏)

門潜り地獄花摘み天仰ぐ   山八訪

 火傷ひりひり焦がす想いよ   嗤   己

残り香に心惑うて崖の上   多摩のO脚

10

 花ふるわせる庭の水仙   柳   樹

11

ジャージ脱ぎ裸の胸を見せつけて   銀次郎

12

 湯船に浸かりペンキ絵を見る    

天   遊

13(月)

寒月やオレンジ色で落ちんとす  

14

 夕陽に染まる段々畑  

15

人知れず野やまを翔る山窩(さんか)たち  

16

 粉をかけつつ踊る末裔   

17(花)

浮かれ咲きあとは侘びしき桜雨  

18

 はかなく消えむ春の夜の夢 

(名残折表)

 

19

蛤に砂を吐かせて肴支度 

20

 十三世紀の物語を読む 

21

厳寒を炬燵より見るは天国か  

22

 赤子に触れるささくれた指   O

23

親不孝重ねし母のちゃんちゃんこ  

24

 屋根を越えゆく石鹸玉吹く  

25

薄氷を見つけては踏みはしゃぎおり  

26

 ふらここ揺らす逐電男  

27

散りじりに胸の振り子が乱れたり  

28

 オリンピックに魔物がひそむ  

29(月)

陽を浴びて心眼に浮かぶ朔の月   山

30

 秋燕惑う黄昏の空   

(名残折裏)

31

枯れ枝に残れる柿のいじらしく  

32

 柑橘系も医薬も効ず  

33

黒髪の香に疼く懐かしさ  

34

 北を開ければ部屋広くなり  

35(花)

杯を止め口で迎える花の宴  

36

 春は揚げ物還暦祝い  



<2013年12月3日〜2014年4月11日>